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管理人の日記
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1997年っていつのことだよ |
「Kiss
You Good-bye」と「Kiss Me
Good-Bye」は、分かるようで分からない英語だが、どちらもゲーム用語である。順に説明をしていこう。
まず、「Kiss You Good-bye」は、「グランツーリスモ」シリーズに登場する、ロックなレース用BGMである。PS1の記念すべき初代「グランツーリスモ」で登場し(【YouTube/GT1】)、その後にPS2の「グランツーリスモ4」にてアレンジ版が作曲された(【YouTube/GT4】)。最新作の「グランツーリスモ7」に収録されているのは、『4』でのアレンジ版ということのようだ。曲調として、「レースの熱さ」や「気持ち良さ」「疾走感」といった感情をストレートに表現したようなロックであり、ゲームを初めて即座に好きになれるBGMだ。構成としても、Aメロ・Bメロ・Cメロといったものを、少しずつ変化させながら3分30秒で奏でており、歌詞こそ無いものの、J-POPのような分かりやすい魅力を誇る。思い浮かべるコースは、もちろん「ハイスピードリンク」だ。
…ちなみに、「グランツーリスモ」シリーズは、『3』からは、“肉声歌唱の洋楽”を主にBGMとして採用するようになったため、ゲームオリジナルのロック曲がメインとして用いられたのは、PS1作品である『1』『2』のみだ。『1』だと、もう一つ、「Get
Closer」(【GT1】 / 【GT4】)という名曲が存在し、こちらは落ち着いた雰囲気からスタートして盛り上がっていくという展開で、サビのカッコよさが目立ち、「勝たなければならない戦い」という雰囲気を盛り上げてくれる。イメージするコースは、「グランバレー・レースウェイ」といった難関コースで、高性能レーシングカーを使った真剣勝負にマッチした曲だ。
――また、『2』でも、疾走感担当として「Blowing
Away」(【YouTube】)、カッコつけ担当として「Never Let Me Down」(【YouTube】)というレース曲が存在する。GT2は、シリーズ2作目ということで、順当なボリュームアップに加えて、ゲーム難易度も大幅に上昇し、RPG的にエンディングまで進められた『1』とは打って変わって、終盤のレースは、そう簡単には勝てなくなっている。桁外れの強さを誇る「エスクード」、そして唯一それに対抗できうる「GT-ONE
ロードカー」といった悪魔の車たちが知れ渡ったのは、少し後の話だ。そういった、容易には攻略できないゲームにおいて、BGMの良さは、長時間プレイを支える大きな動機となってくれた。
ところで、グランツーリスモでは、初代から、「耐久レース」と呼ばれる、1時間以上が掛かるような長時間レースが存在した。現在だとそこそこという感じだが、「ゲームは週3回、1日1時間」だった我が小学生時代において、この耐久レースというのは、まさに一大イベントであった。そして、シリーズ初期作では、レースBGMはローテーションせず、開始時に選ばれた1曲が、ずっとループして流れる仕様だった。以上の理由により、耐久レースの気分を盛り上げるために、お気に入り楽曲が出るまで、ひたすらリセマラを繰り返したりしていた。それくらい、楽曲というのは、ゲーム体験に重要なのである。
ちなみに、上でも触れたが、グランツーリスモシリーズは、PS2に移行してからは、実在洋楽をレースBGMとして採用するようになった。しかし、残念ながら、私は全く印象に残っていない。私は、『3』はPS2購入時期の関係上スルーしたものの、『4』はかなり長く遊んでいった。だが、洋楽の中で印象に残っているのは、「Feeder -
Shatter」(【YouTube】)、以上1曲である。同作では、『1』の楽曲アレンジがあったことや、プレイリスト機能(当時は外部楽曲を追加できるわけではなかった)が存在したため、OPテーマの「Moon Over The Castle」(【GT4】)を入れて、荘厳なコーラスでレースするミスマッチを楽しんでいたりもした。そんなことまで覚えているのに、新要素となった洋楽レースBGMは、たった1曲しか記憶に残っていないのである。
――やれ、他にも、ドラゴンクエストシリーズの移植版などにも言えることだが、ゲーム楽曲は、「ゲームBGM」というジャンルとして、世の中に定着していると思う。だから、何でも「オーケストラ」だとか「洋楽」だとか、他ジャンルの楽曲に近付ければ良いというわけではない。ゲーム曲は、ゲーム曲それ自身として、独自路線を生きるべきである。
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エンディングにおいて、直接・間接の両面で、一切セリフの無い主人公… |
さて。グランツーリスモの「Kiss You Good-bye」の次は、自分と相手を入れ替えて、攻守交代、「Kiss Me Good-Bye」である。これは、我らがアイドル・オイヨイヨのデビュー作:「ファイナルファンタジー12」のエンディングテーマ曲の1つである。「Kiss
Me Good-Bye」は、3部に別れているエピローグの2番目、「平和になったラバナスタと、主人公たちのその後」の部分を担当している(【YouTube】)。
…やれ、当時を覚えている皆さまは、今では懐かしく感じるだろうが、発売直後のFF12は、極めて評価が低かった。「ガンビットによる自動戦闘」というゲーム性が全く理解されておらず、レアアイテム集めや王宮前・ガリフ前といった特殊プレイも未開発、ストーリーについても「薄い」「虚無」「空気」などと、散々であった。
――また、「主題歌のゲーム上での使用法」という面を見てみても、FF12では、シリーズで初めて、「ただエンディングで流れるだけのテーマ曲」になってしまった。それまでの作品だと、FF8では「ラグナ編で登場する『ジュリア』の歌唱楽曲」、FF9では「ガーネットが知っている『記憶の歌』」として、世界観上の位置付けが為されていた。FF10の「素敵だね」は、そのような仕掛けこそ無かったものの、「ユウナのテーマ」を皮切りに、様々なアレンジが用意されており、歌詞も、そのものズバリ、ユウナの心境を歌っている。続いて、ダブル主題歌となったFF10-2の「real Emotion」「1000の言葉」も、「歌で世界を盛り上げたい!」というユウナ等の気持ちがこもっている。その方向性はどうかと思うが、とにかく、作中世界で実際に奏でられる楽曲として、ちゃんと意味が存在した。だが、FF12の「Kiss
Me Good-Bye」は、本当に、エンディングムービーのBGMとして流れているだけ、以上である。
なお、そこからかなり長く、“エンディングで流れるだけの主題歌”という悪癖は続き、再び主題歌が世界観上の意味を持つようになったのは、なんと2024年の「FF7リバース」を待つことになる。いやあ、2回の「No
Promises to Keep」に加えて、ほとんど知られていないけど、最終章のデート版(【YouTube】)は派手に神でしたね…。
ただし。そんなFF12の「Kiss Me Good-Bye」が、取って付けたようなダメ主題歌かというと、決してそんなことはなく、むしろこれ以上ないくらいにエンディングの雰囲気に合っている。最後の戦いから1年後、平和を取り戻し、突き抜けるような青空…そんな世界に、透き通るような楽曲の雰囲気は、非常に合致している。FF12では、ボーカル曲は「Kiss
Me Good-Bye」が唯一であるため、「これは…、歌声…?」と、印象に残るものだ。また、「エンディング以外では、アレンジも含めて一切使われない」というのも、逆にエンディングの特別感を際立たせてくれていると言えよう。
――ちなみに、FF12は、これまでのFFとは打って変わって、渋さを重視した演出になっている。直前の作品があのFF10ということもあり、とりわけ発売直後は、ストーリー評価は悲惨であった。ただし、ラスボス近辺のイベントについては、さすがにFFシリーズのクライマックスということで、「絵的な派手さ」と「キャラの掘り下げ」を交えた、数多くのドラマチックな演出が為されている。初回プレイ時の私は、急にいつものFFみたいになって、いたく驚いたものであった。「Kiss
Me Good-Bye」が流れるエピローグも、その中核と言える存在であり、前後のストーリー重視型FFと比べても、引けを取らない盛り上がりだ。そういうわけで、「Kiss
Me Good-Bye」は、主題歌として、良い使われ方をしていると言えるだろう。
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「YouとMeを入れ替える」で、最初に思いついたのがコレだった |
ちなみに。グランツーリスモの「Kiss You Good-bye」も、FF12の「Kiss Me Good-Bye」も、小学生でも分かるような英単語のみを使っているが、ではどういう意味かと問われると、「?」と思わざるを得ない。
…まあ、これは楽曲の題名ということで、一筋縄ではいかないフレーズとなっているのだが、「Kiss
You Good-bye」のほうは、実際の口づけを表現しているのではなく、どちらかと言えば「日常への別れ」といったニュアンスなんだそうだ。レースゲームのBGMということで、新たな世界に旅立つ…などといった、肯定的な意味を秘めているのだろう。
――いっぽうで、「Kiss Me Good-Bye」は、一般的な英語として成り立つ内容であり、「私に別れのキスをして」という感じだ。ちなみに、「Kiss
Me Good-Bye」の歌手であるアンジェラ・アキは、日本語と英語の完全なるバイリンガルであり、「Kiss
Me Good-Bye」にも、日本語バージョンが存在する。二つの言語の歌詞は、ただ単純に訳しただけというわけではないようだが、どちらの場合も、普通の恋愛的な意味での「別れ」を表しているようだ。FF12のエンディングは非常に明るい雰囲気だが、“戦いで失った物への悲しみ”という要素も存在するため、その辺りとマッチさせているのだろう。いや〜、本当、ゲーム楽曲って面白いね!
(2025年9月14日)
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