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管理人の日記
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証拠品倉庫でうごめく例のシーン… |
「蘇る逆転」は、「逆転裁判1」を初代DSへ移植する際に追加された新エピソードであり、同移植版のサブタイトルとなったほか、後の作品でも正史とされている。
…まず、初期三部作である『逆転裁判1』『2』『3』は、ゲームボーイアドバンスで2001,2002,2004年に発売し、それぞれ好評を博した。このヒットが、今なおシリーズ人気の根底にあることは、皆さまご存じであろう。その後、例の逆転裁判4が2007年に登場してしまうことになるが、その間の2005年にニンテンドーDSで発売された作品が、「逆転裁判:蘇る逆転」である。内容は、『1』の移植であるが、追加エピソードとして、第4話「逆転、そしてサヨナラ」の次に、第5話「蘇る逆転」が用意されている。DSは、GBAソフトもプレイできる…どころか、カートリッジ差込口が2つ存在するという、仰天のメカデザインになっている。そして、逆転裁判1では、GBA版とDS版を同時にセットすることで、いきなり「蘇る逆転」からプレイできるという、親切なのかそうでないのか分からない仕様もあったりした。
――さて、このような作品が登場した経緯として、私は、“シリーズを本格的にニンテンドーDSで展開する前の肩慣らし”と思っていたが、どうやら【Wikipediaの記事】によると、海外版を作る際の逆輸入品ということらしい。「ゲームボーイアドバンスの逆転裁判」は、日本でしか発売されていないのだ。ちなみに、その後、『逆転裁判2』『3』もDS移植されているが、それらについては追加エピソードは存在しないため、『1』だけの豪華仕様となっている。
さて。この手の「追加エピソード」というと、原作ファンからは蛇足扱いされることが多い。とりわけ、『逆転裁判1』は、最終話の「逆転、そしてサヨナラ」がカリスマとも言える人気を誇り、そのまま物語は『2』へと繋がっていく。その間のエピソードというと、どう考えても邪魔になる未来しか見えない。さらに、発売当時は、狂気的なDSブームもそこまでという感じではなく、DS
Liteも未発売であった。よって、天板と下面がピッタリ組み合わさらない不格好な初期型DSを買ってまで、たった1話の追加エピソードを遊ぶかどうかは、かなり微妙なところがあった。そして、未来から振り返った場合、その後に発売された作品が『4』であるため、更に不安が高まるだろう。
――しかしながら、この「蘇る逆転」は、非常にクオリティの高いエピソードであり、初期三部作のグループに、間違いなく肩を並べられる。時系列としては、『1』の第4話の直後(=『2』よりも前)に発生したエピソードであり、警察内部を舞台とした、非常に重厚かつ複雑な事件が展開される。プレイ時間は、当時の最終話にして最長エピソードだった『3』の「華麗なる逆転」に匹敵するクラスであり、1話完結とはいえ、そのクラスの力強さを持った物語が展開される。前後の作品と直接には繋がらないものの、本家シリーズの『4』以降や『検事』では、「蘇る逆転」で初登場した要素も数多く登場している。劇場版アニメの独自要素が好評であったため、本編に逆輸入されたという感じなのだろう。
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形態が進んだり戻ったりと、デジモンのようなキャラ |
さて。既に述べた通り、「蘇る逆転」は、『1』のエンディング直後ということで、真宵ちゃん不在の時期であるため、代わりに「宝月
茜」という新ヒロインが登場した。見た目はジェネリック真宵ちゃんという感じだが、科学捜査官を目指している設定があり、得意の「カガク捜査」により、新しいプレイ感覚を提供してくれる。
…具体的に、手伝ってくれるのは、指紋探しやルミノール検査(血液反応を調べる)と言った感じであり、ニンテンドーDSのタッチパネルやマイクを用いたミニゲームとして実装されている。やれ、当時は、「2Dマリオで、ストックアイテムを使う際、ボタンが余っているのに、タッチパネルを強要される」という地獄のような時代であったが、「蘇る逆転」での“カガク捜査”は、量が適切で、世界観に合っており、かつ「ミニゲームのくせに激烈難易度」なんてこともない。むしろ、“ただ文字を読むだけ”になりがちなノベルゲーへの味付けとして、非常に良い調整だったと思う。これを出した会社が次に『4』を作るんだから驚きだなあ。
さらに。「蘇る逆転」は、“『逆転裁判3』の後に登場した、『逆転裁判1』内のエピソード”という特殊な性質を活かし、システム的にも大変ドラマチックな作りをしている。
…まず、『1』のみに存在する仕様として、「探偵3日目」「法廷3日目」というものがある。前に、「大逆転裁判」の感想でも書いた通り、調査と裁判を適切にパート分けすることにより、物語進行にテンポ感を与えられる(【日記:2025/9/6】)。だが、さすがに「調査」→「裁判」を3回繰り返すのはくどかったということか、『2』以降の作品では、どれだけプレイ時間が長くとも、2日で終わる作りとなった。しかし、「蘇る逆転」は、あくまで『1』のエピソードということで、もちろん3日目まで裁判がもつれ込む。
――そして、関連する点として、『2』からは、法廷パートが「前編」「後編」で分けられるようになった。これは、ゲーム上でも見ることができるため、「2日目の後編」になると、「ああ、ここで事件に決着が付くんだな…」と、予想が付いてしまっていた。しかしながら、初期三部作の最終話である『3』の第5話では、そう予想されるのを前提としたうえで、「後編2」という更なる展開が用意されていた。同エピソードでは、「法廷2日目:後編」(※「後編1」や「中編」という表記ではない)の時点で、“ラスボス”と呼ぶにふさわしい、巨大な黒幕との対決が展開されていた。それに引導を叩きつけ、ようやく終わったなあ…と思っていたところからの、まさかの大逆転で、裁判が「後編2」へと進んだのだ。そして、それを踏襲してか、「蘇る逆転」でも、3日目の裁判は「前編」「後編」「後編2」の3部構成になっている。以上の理由により、同エピソードの構造は、「探偵1日目」「法廷1日目:前編/後編」「探偵2日目」「法廷2日目:前編/後編」「探偵3日目」「法廷3日目:前編/後編/後編2」とシリーズ最長になり、まさに1〜3の集大成と言える作りとなっている。
加えて。「蘇る逆転」から、その後のシリーズで定着した要素は多い。例えば、ヒロインの「宝月
茜」は、その後もレギュラーキャラとして定着したが、シリーズの時間の流れにより、一筋縄ではいかない人物となっている。まず『4』では、「蘇る逆転」から9年が経って、超劣化をした。見た目的な意味もあるが、どちらかというと中身の劣化が酷いものだ。一方で、時系列的に「『4』より前だが、『1』よりは後」という複雑な位置付けの『逆転検事』では、「蘇る逆転」から2年が経ち、ちょっとだけお姉さんになった、まだかわいい姿を見せてくれる。なお、作品やキャラクター性の評価はともかく、「科学捜査」だけは、一貫して好評であり、『4』『5』『6』全てに登場している。
…また、マスコットキャラクターの「タイホくん」は、GBA版『1』の時点から、小ネタとしてじわじわ登場していたのだが、「蘇る逆転」で初めて立体化をした。一発ネタと思いきや、新システムである「動画証拠」の検証で、非常に良い味を出してくれている。その後、『検事』などでの更なる出番拡大に繋がる、重大な契機だったと言えるだろう。
そういうわけで。「蘇る逆転」は、『1』のDS移植における非常にクオリティの高い追加要素であり、名作に新たな彩りを加えてくれると言える。リマスター版の「逆転裁判123
成歩堂セレクション」にもしっかり収録されているので、もしここだけ未プレイという人は、再プレイの時に期待して良いというものだろう。
…とはいえ、あくまで追加要素ということで、扱いに少しだけ微妙なところがある。まず、全47話が存在するアニメ版では、人気の高い『1』『2』『3』が映像化された(【日記:2024/12/12】)。しかし、このアニメには、「蘇る逆転」は含まれていない。まあ、入れると、7コ話を使った「華麗なる逆転」並の長編エピソードとなることは間違いない。同アニメは、『2』の1話を第2期の導入に持ってきたり、『3』のメインとなる1,4,5話をラスト1クールに集中させるなど、構成も工夫されており、そう考えると、確かに入れどころは難しい。しかし、何かとお得な点の多いアニメ化であり、『1』『2』『3』のメインエピソードは全て収録されていたことから、「蘇る逆転」だけカットされてしまったのは、仲間外れにされてしまったようで、残念である。「原作再現(※大嘘)のために追加要素は削除した」とかほざいていたバカカスを彷彿とさせる…。
――その他、現在では、GBAや初代DSといったハードが懐かしの存在となり、リマスター版で初めて逆転裁判を触れる人が増えた。だが、そうなると、『1』と『2』の間に挟まれる「蘇る逆転」が、蛇足感の強い存在となってしまう。『1』は、シリーズ初期作ならではの小粒なところがあり、最終話の「逆転、そしてサヨナラ」でさえ、プレイ時間は4〜5時間というところだった。だが、「蘇る逆転」は、その2倍近い長さの大長編であり、しかも劇場版ばりに前後と直接は物語が繋がっていない。よって、『2』に進むまでにダレてしまう危険性があるのだ。そういうことが気になる場合は、本来の発売順通り、まずは『1』を4話までプレイし、その後に『2』『3』と進めて、最後に「蘇る逆転」に戻って来る…という方式にするのも良いかもしれない。
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これは『2』のバッドエンドだけど、こちらも山ほど見たなあ |
そういうわけで。『1』に追加された「蘇る逆転」は、“未プレイの方は、ぜひ遊んでみてほしい”と言えるくらいの良エピソードなのであるが、一つだけ、非常によろしくない点がある。それは、「証拠法」というルールについての、一発ゲームオーバーポイントだ。しかも、ただの即死地点というわけではなく、時間が経ってから詰んでいたことが発覚するというパターンであり、とても不親切だ。
…さて。私も、「蘇る逆転」をプレイしたのは、既に20年近く昔であり、詳細は覚えていない。だが、確か、「証拠法」という制度についての話であり、“証拠自体は正しいものの、その提出順を工夫しなければ失敗してしまう”という流れであった。この際、選択肢を間違えると、やり直しの機会はなく、即座にゲームオーバーとなる。しかも、他の即死ポイントと異なり、選択肢を選んだのちに、いったん物語が普通に進むように思えるものの、かなり時間が経ってから誤りであったことが示され、そこからではどうすることもできない。意図的に詰みセーブを作らせるような構成であり、はっきり言って理不尽だ。ちなみに、正解は、「その時点では提出しない」である。逆転裁判シリーズのお約束として、「証拠品を提出する
/ 提出しない」などの選択肢が出た時は、「提出する」と、前向きな選択肢を選ぶのが正解であるのがほとんどだ。“それをあえて逆手にとって間違わせる”という構成は、分からないでもないが…いくらなんでも、時間差で詰ませるというのは、悪趣味がすぎるだろう。私は…!!
そう……私は… 詰んでいたのだ 初めから
――ちなみに。逆転裁判では、“ゲームオーバー=エピソードの最初からやり直し”ということはなく、「法廷3日目:後編」など、結節部からの復活が可能である。だが、それにしたって、何十分も戻されるのはストレスであるし、テキストアドベンチャーのため、何か工夫ができるわけでもなく、時間短縮可能な要素も少ない。現代はもちろんとして、2005年当時であっても、ちょっと“許されざる者”である。
やれ。「蘇る逆転」は、初期三部作が一段落ついた後ということで、「シリーズのマンネリ化阻止」という課題にぶち当たっていた頃であろう。その一環として、「シリーズのお約束を逆手にとって、時間差での即死ポイントを発生させる」という高難易度要素が導入されたのかもしれない。しかし、その結果が、20年が経っても理不尽さを覚えているというものであり、その後のシリーズでも全く採用されなかったことから、成功とは言い難いだろう。
…ちなみに、逆転裁判シリーズの展開は、我々の間でインターネットがどんどん普及していく時代と重なった。よって、“無闇やたらと難易度を上げても、単にネット検索されるだけ”と判断されたためか、後期シリーズでは、推理難易度も下がり気味となったが、それ以上にシステム面での易化が凄まじい。とりわけ本家作品では、『5』からは、ゲームオーバーとなってもその場から復活でき、もはやライフゲージが完全に有名無実化してしまった。
――しかし私は、「逆転裁判」は話を読むゲームなので、親切すぎるくらいで良いと思う。そもそも、逆転裁判では、昔から無限セーブが可能であった(選択肢や証拠品の選択時には、セーブできない作品もあったりするが…)。なので、ライフゲージは、実際の制約になっておらず、プレイヤーに軽いストレスを与えるだけのフレイバーと言える。その適切なストレスの捉え方が、今と昔では異なるということなのだろう。確かに、『1』の金属探知機のように、高難易度が理由で印象に残っている場面は存在する。でもまあ、それ以上に、飛躍した推理が求められ、意味不明となるほうが遥かに多い。私は、逆転裁判は簡単でいいと思うよ。
(2025年9月11日)
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