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管理人の日記
ネットを見ると、原子力発電派のほか、石油派なども存在する
ん〜〜〜〜やっぱFFのグラフィックは凄いな! |
FF7の「魔晄炉」は、明らかに原子力発電所をモチーフとしている。公害を出さないエネルギー源、事故を起こすと大変、魔晄を浴びすぎると中毒を起こす、光るなどの点がそれである。
…しかしながら、それらの要素を詳しく見ていくと、現実世界の原子力とは異なる点も多い。そういうわけで、今回は、「FF7の魔晄炉と、現実世界の原子炉の違い」という点に着目して、記事を書いてみることにした。
――ちなみに。私は、この分野については完全な素人というわけではなく、一応は原子力・放射線に関わる国家資格も持っている。というわけで、普通の人と比べれば、まあ、多少は詳しく述べられるはずである。もっとも、原子力・放射線という分野は異様に複雑で難しく、恐らく全分野について正確にスラスラと語れる人は、この世界に存在しないのではないだろうか。そういうわけで、私も、あくまで自分の詳しいところに関してのみを述べてみたい。また、ここはあくまでゲームサイトであるため、平易な表現でまとめられるよう気を付けていくつもりだ。
では、まず「魔晄」というものの定義について、はっきりさせておこう。と言っても、「FF7」というシリーズ内だけで、多数の派生作品が存在しており、設定が微妙に異なっている。そのため、今回は、最新作である「FF7リメイク(第1弾)」のものを主として取り扱っていくことにしよう。
…さて。攻略本:「FF7リメイク
アルティマニア」の69ページによると、「魔晄」は星の生命の流れを司るライフストリームと同一物質であり、「魔晄」という名前も、神羅カンパニーが付けたそうだ。電力や燃料として使用可能である。星における生命の流れを妨げるため、ミッドガルの周囲の土地は痩せてきている。そして、「魔晄炉」という施設は、地中から魔晄を汲み上げて発電をするプラントである。そして、「魔晄中毒」は、高濃度の魔晄にさらされた際に、精神に異常をきたす病気ということだ。
――その他、7リメイク第1弾では物語に関わってこなかったが、精鋭兵士である「ソルジャー」を作るためにも魔晄が使用される。ジェノバ細胞を埋め込まれ、かつ魔晄を浴びて、それらに支配されない精神力を持った者だけが、「ソルジャー」となれるそうだ。
ライフリング(溝)があるということは、光学兵器ではなく実弾系兵器の可能性が高い |
では、「似ていると思った点」から述べていこう。
…まず、魔晄は、公害を発生しないエネルギー源ということである。ゲーム冒頭でクラウドが参加しているアバランチは、「星のエネルギーを削ってしまう」という理由で魔晄発電に反対をしているが、その他の公害が発生するという話は全く出てこない。また、大勢が居住する都市のわざわざ近くに作っていることから、NOxやSOxといった現実世界における環境汚染気体も、排出が無いか、極端に少ないと思われる。ちなみに、FF7には「石炭」が存在する(ゴールドソーサー初進入前のバレットの回想より)ため、魔晄は、少なくとも石炭よりは優れたエネルギー源という扱いのようだ。
――さて。現実世界における原子力も、発電それ自体においては、二酸化炭素を一切発生させない。そのため、温室効果ガス削減の切り札とされることもある。今はどうだか知らないが、十数年前、原発事故が起こる前の時点で、「電気自動車が二酸化炭素を削減できるのは、その電気を原子力で作っているという前提があるから」と聞いたことがある。与太話ではなく、当時の大学でその筋の専門家から聞いたので、その時点では間違ってはいなかったはずだ。
また、魔晄は軍事転用が可能である。
…ただし、その性質は、割と異なっている。FF7世界の魔晄は、生物に浴びさせて魔物に進化させるといった利用法のほか、リメイク第1弾の範囲には出てこないが、「魔晄キャノン」という兵器も登場する(【YouTube】)。作中の描写から、魔晄を直接打ち出すのではなく、魔晄エネルギーで何かを加速して発射する実弾兵器であると思われる(砲身に溝が掘られている。粒子砲としては速度が遅すぎる)。ちなみに、FF7の世界は星で確定であり、世界地図中央のミッドガルから北の大空洞へ、大陸を超えて命中させているので、巡航ミサイル的な兵器と考えると矛盾が無くなる。まあ、ムービーでは、どう見ても光学兵器なのであるが…。
――いっぽう、現実世界における原子力の軍事転用というと、まずはウランかプルトニウムの核分裂による熱線と爆風を攻撃に使用する「原子爆弾」、原爆を起爆装置としてD-T核融合を発生させる「水素爆弾」が有名である。その他、放射線による生物殺傷能力に注目した「中性子爆弾」、放射性物質による汚染地域の形成を目的とした「放射能兵器」なども存在する。初代メタルギアソリッドの141.52でナスターシャ・ロマネンコが、「核廃棄物には一つだけ有効な利用法がある。軍事転用だ」と語っているように(【YouTube】)、この目的の用途はやたらと多彩である…。
ちなみに、フィクションの世界だと、「ゴジラ」など、放射線を浴びることによって強化された生物が誕生することがあるが、今のところそういった現象は現れていない。放射線による生物の突然変異は、放射線によってDNAが破損し、その際の誤修復が細胞分裂によって引き継がれることによって起こるが、途中でそれが発生するとがん細胞になってしまうため、強化された生物になることは無い。
…なお、植物に対して放射線を照射して進化をさせる実験は行われており、「放射線育種場」と呼ばれているらしい(【農研機構のページ】)。これも恐らく、相手は成長した植物ではなく、その種子であろうと思われる。ちょっと、成長してから放射線で強化生物とするのは、さすがに神羅の科学力を使っても難しいと思われる。まあ、ソルジャー作成にはジェノバ細胞も用いており、それを上手く放射線でコントロールしているという利用法も考えられる。メト○イドみたいに、β線を当てると増殖するとか、そんな感じなんだろう…。
放射線を浴びた急性影響で、意識不明・寝たきりになる…ということは無い |
さて。話がだいぶ逸れてしまったが、魔晄と原子力が似ていないと思った点を述べていこう。
…まず、魔晄は緑色に光っていることである。なに、放射線だって青く光るではないか…と思う人もいるであろうが、チェレンコフ光は放射線ではない。こういう誤解が発生する理由は、チェレンコフ光が放出される場面は、放射性同位元素によるβ線・γ線が水中で放出されている時であるからである。「チェレンコフ光が発生するのは、放射線が出ている時」であって、チェレンコフ光≠放射線、なのである。よって、チェレンコフ光を目視していても、水と鉛ガラスでβ線・γ線を遮蔽すれば、放射線の影響は受けない。なお、チェレンコフ光を発生させる具体的な方法は、264keV以上のエネルギーを持つβ線源を水中に沈めることである。また、0.1〜10MeVほどのγ線と水の相互作用においては、コンプトン散乱が支配的であり、コンプトン散乱電子線の最大エネルギーが264keVとなるγ線エネルギーは計算上423keVとなるので、これ以上のエネルギーを持つγ線源が水中に存在する場合も、チェレンコフ光が発生しうる(【参考資料/JAEA】)。こういった放射線を出す放射性同位元素がウラン核分裂の生成物として水中に生成されれば、青白い光を観測可能ということになるのだ。こんな話をゲーム系サイトでしてどうすんの。
――が。魔晄(ライフストリーム)は、どう見ても空気中で緑色に光っている。チェレンコフ光は、理論上どうやっても青くなり、緑色にはならない。魔晄漏れによる事故を防ぐために、神羅があえて色を付けている…というわけでもなく、自然界に存在するライフストリームも緑色に光っている。光っているということは、つまり何らかの形でエネルギーを放出している。ライフストリームは、ばんばかばんばかエネルギーを捨てているのだ。そもそも星はエネルギーを浪費しており、ちょっとくらい掘り出して使ったところで、実は大して変わらないのかも…?
また、原子力には放射線障害があるように、魔晄にも「魔晄中毒」という症状が存在し、これを根拠として「原子力と魔晄は似ている」と考察するサイトもあった。しかし、両者を厳密に比べてみると、実はあまり似ていないと感じる。
…というのも、生物への放射線影響は、まず「確率的影響」と「確定的影響」に分けられる。このうち、確率的影響は、がんと遺伝的影響の2つであり、低線量でも起こりうるとされる“LNT仮説”が広く受け入れられている。魔晄に長期的な健康影響があるかどうかは、ゲームの中では語られていないため、確率的影響については、これくらいに留めておこう。
続いて、確定的影響については、一度に1回の被曝線量が100mSvを超えた時に起こるとされている。短期間で生物に致死的な影響をもたらすものとして、骨髄死・腸管死・中枢神経死の3つが挙げられる。また、「事故」や「放射線医療の副作用」でも、こちらが取り沙汰される。魔晄中毒は、明らかに短期間で発生しているため、こちらの確定的影響と比べるべきであろう。
…ところがどっこい。魔晄中毒は、上で書いたように、「精神に異常をきたす病気」とされている。これについては、原作終盤のクラウドの精神錯乱や、リメイク版におけるジェシー父親の意識不明といった症状から、ゲーム内における表現と一致している。しかし、放射線では精神障害が引き起こせないのだ。放射線の生物影響は、主に幹細胞が障害されることによる分裂停止によって起こるため、分裂しない脳や脊髄にはほとんど影響を及ぼさない。上で触れた放射線による中枢神経死についても、神経それ自体が傷害されるのではなく、血管障害や浮腫が原因であるという。しかも、中枢神経死の場合、急速に神経機能が障害され、3日ほどで必ず死亡することになる。よって、放射線では、魔晄中毒にすることはできないのだ。
しかし、放射線によって知的障害を引き起こすことは不可能ではない。それは、母体のお腹の中で被曝をすることである。胎児期には、神経細胞は活発に増殖をしているため、そこに放射線被曝を受けることにより、精神遅滞を起こしうる。原爆被爆者の疫学調査だと、妊娠8〜15週に100mSv強の被曝をすると、重度精神遅滞が起こりうるということだ。恐らく、この時期が、神経細胞が活発な増殖をするタイミングなのであろう。しかしながら、クラウドさんもジェシー父も、さすがに0歳児以下ということは無いため、やっぱり魔晄と放射線は一致しない。
――ちなみに、本編以外だと、映像作品の「アドベントチルドレン」で、「星痕症候群」という病気が、ライフストリーム(魔晄)のせいとされているようだ。その内容は、黒いアザができ、全身の穴から膿を出して死ぬというものである。これについては、放射線による骨髄障害の症状が、「血小板減少による出血」「リンパ球減少による感染」とされており、アザとは内出血のことであるため、描写的に近いと言える。そして、星痕症候群は子供に起こりやすいとされているが、子供は造血作用を持つ赤色骨髄の割合が大人よりも多いため、その方向で考えれば納得が行く。まあ、骨髄死は、概ね被曝から60日までに起こるため、「2年」という本編→アドベントチルドレンの経過時間が気になるところだが、それ以外は、放射線影響に近いと言って良い。関連作品だと、魔晄=放射線になっている…?
これ絶対(魔晄が)入ってるよね |
さて。ここまでいろいろと書いてきたのだが、実は魔晄を原子力ではなくガスと仮定すると、上の問題の多くが解決してしまうのである。
まず、魔晄中毒を「ガス中毒」と考えると、神経疾患を引き起こすことは可能である。ガス自体に毒性が無くとも、酸欠状態となるだけで、低酸素脳症を引き起こし、慢性の精神障害が起こりうる。また、有機溶媒など、神経に直接の悪影響をもたらすガスも存在する。私も、シンナーで縮んだ脳というグロ画像を小学校か何かで見せられたことがある。クラウドさんの、全身が震える症状は、小脳的な障害が近いだろう。余談だが、現実世界の都市ガスおよびプロパンガスは、有毒な成分が入っておらず、少量であれば毒とはならない(大量に吸引すると酸欠になりうる。また、火災や不完全燃焼による一酸化炭素発生は起こる)。
…更に、気体(ガス)には、色付きのものが存在する。例えば、塩素ガスは、黄色い気体である。まあ、常時自発発光するとなるとハードルが高いが、それ以外の方法で緑色に見えるようにするのは難しくない。少なくとも、放射線を緑色に見せるよりは明らかに楽である。しかも、ガスは、大気中を人間感覚的な速度で漂ってくれるというメリット付きだ。
――そして。ガスを使うとなると、「魔晄キャノン」の描写が非常に合点が行く。要は、火薬ではなくガス爆発を使って、弾丸を加速しているのだ。それならば、燃焼ガスの一部が跳ね返ってくることにより、後ろに有った神羅ビルの窓が割れたのにも納得がいく。また、光学兵器は、基本的に光かそれに近い速度で飛んでいくのだが、ガスで加速する実弾兵器ならば、常識的な速度に留まるため、これも作中の描写と一致する。
最後に。ガス発電は、公害が少ない。さすがに、何かを燃やしているということで、二酸化炭素は発生するのだが、その量は石炭の半分・石油の2/3であり、既存の石炭・石油火力発電をガス発電に変えるだけで、二酸化炭素の削減を達成できる。そして、天然ガスは、植物・動物の死骸などの有機物から出来ているらしい。これを生命エネルギーと捉えることも可能だ。魔晄は純粋な生命エネルギーであり、実在する天然ガスよりエネルギー効率は良いであろう。
そして。決定的と言えるのが、オープニングでの描写である。ここでは、プレート上部の都市の情景が映し出されており、未来的な技術が存在しながらも、どこか荒廃している雰囲気を醸し出しているが、それはともかくとして、その中に、ガス缶のようなものを車に積んでいる青年が写っている。残量を示すであろう目盛りが緑色に光っており、中身は魔晄と見て間違いない。この描写は、現実世界におけるガス配給と瓜二つである。
…更に、その町には、蒸留塔・パイプライン・ガスタンクといった設備が大量に存在するが、これもガスを取り扱うためと考えれば納得できる。恐らく、ミッドガルでも、便利で安価な“都市魔晄”に対して、値段が高くハズレ枠の“プロパン魔晄”などが存在するのだろう。
――しかし。最後の関門として、ガスを吸ったところでソルジャー化はできない。脳が萎縮した結果、不要な機能が取り払われ、より効率的な生物に進化できる…なんてことは、がんによって良性新生物になるくらいの難易度を誇るだろう。ここは、現実世界に存在しないジェノバ細胞と、宝条博士の職人力に期待するしか無い。
ということで、結論を言おう。魔晄炉は、原子力発電所ではなく、ガス火力発電所であった。バレットさんは、あれだ。石炭の炭鉱夫をやっていたけど、魔晄ガスが流行りすぎて全く売れなくなったから、アンチ活動を過激化させていったんだよ。多分…。
(2022年2月2日)
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