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管理人の日記
宝石を盗んだなんて濡れ衣だ!→でもコートは盗んだだろう?の完璧理論に草
メインシナリオと小ネタ部分の両方が集結した、最高のラストシーンです |
「人生で最高の映画を一つ挙げろ」と言われたら、私は「ターミネーター2」とどちらの名前を出すか悩むかもしれない。本日は、言わずと知れた名作映画:「タイタニック」の感想記事を書いてみることにしよう。先日、とある機会で視聴をするチャンスがあったのだ。
…さて。この映画は、その名が示す通り、実在した客船:「タイタニック号」の沈没事故を舞台とした1997年のアメリカ映画であり、上流階級に不満を抱いているヒロイン:「ローズ」と、貧しい絵描き:「ジャック」との悲恋物語を描いている。映画は明確な2部構成となっており、前半部では少女漫画のようなベタベタのラブストーリーが展開されるが、船が沈没する後半部では一転してパニック映画のような迫力のシーンを楽しむことができる。3時間15分という長丁場であるが、ダレることは一切無いと断言して良いだろう。
――ちなみに、皆さまご存じの通り、この映画は1997年に公開されてから、世界中で大ヒットを記録した。船首(またはそれに似た場所)に立って一人が腕を広げ、もう一人が後ろから手を回して抱きかかえるようなポーズを“タイタニック”と呼ぶことは、映画を見たことのない方でもご存じだろうが、それは当然この映画の中のワンシーンから来ている。また、データー上でも1998年の米アカデミー賞で多数の賞を取ったほか、興行収入でも2009年に同監督の「アバター」に抜かれるまで、全ての映画の中で最高のものを記録するなど、数値面でも“傑作”と言って間違いの無い作品である。
さて、この映画の最大の魅力は、「王道の恋愛映画」としても「歴史を記録した渋い映画」としても楽しめるという点である。
…まず、この作品は、一般に「恋愛映画」として知られている通り、メインシナリオは終始ローズとジャックの恋愛をテーマとして進んでいく。本作で「敵」として登場するローズの婚約者と母親は、貴族としての階級以外何も持っていない分かりやすい「悪役」であり、逆に身分の低いジャックは、外見も内面も極めて魅力的な人物として描かれている。こんな都合の良い物語は、今や漫画の中にすら存在しないだろう。メインテーマは「恋愛」と「人の死」であり、良く言えば「王道」、悪く言えば「陳腐」であるが、FF10の例を見れば分かるように、大衆娯楽映画として考えれば実に適したテーマであると言える。この映画「タイタニック」は、メイン部分だけを見たとしても、良作であると判断することができるだろう。
――ただ、私が思うこの映画の真の魅力は、メイン以外の小ネタ部分である。本作では、ローズやジャックなどの主要人物とその物語こそ架空のものであるが、それ以外の部分ではできる限り史実を再現しようと務められており、例えば船の乗組員などはその大半が実際と同名/同役職で登場するほか、数カットしか映らないような貴族にも実在の人物からエピソードが取られていたりする。もちろん、そのこだわりは映像部分にも注がれており、当時最高峰のCGによって迫力のシーンが作られているほか、セットや小道具でも贅沢な演出が為されている。そういった細やかな部分と、実在したタイタニックとの共通点や違いを調べるのも、この映画の大きな楽しみ方の一つだと言えるだろう。
というわけで。私は、この映画「タイタニック」を実は断片的にしか見たことが無く、大筋の物語とその結末こそ知っていたものの、通しで視聴したのは今回が初めてであった。そういった中で、特に気に入ったエピソードを幾つか挙げてみることにしよう。
…まず、映画の序盤に、ローズと婚約者&母親が他の船のスタッフや貴族と食事をする、ちょっとしたシーンがある。食事中、ヒロインのローズがタバコを吸い始める(当時も女性が喫煙をすることはあまり好まれていなかったらしい)。すると、母親が「タバコは嫌いだ」と言い出すのだが、構わずローズが吸い続けるため、婚約者は勝手にタバコを取り上げて消してしまう。そして、ローズのために料理を勝手に注文するのだが、ローズの機嫌が直ることはない。その後、船のスタッフ(造船会社の社長)が、タイタニック号の偉大さについて自慢をしだすのだが、ローズは「フロイト博士(精神学者、当時まだ存命)はご存じ? 男性が大きさにこだわる理由について面白い分析をなさっているの」と言い捨てて退席をしてしまう。それを聞いた造船会社の社長は、「フロイトとは乗客の誰かか?」とトンチンカンなことを言って、このシーンは終わりである。…まあ、メインである恋愛部分とは一切関係ないと言ってしまえばそれで終わりであるが、要するに「ヒロインのローズとその母親・婚約者は不仲である。また、造船会社の社長は、馬鹿にされたことすら気付いていないほど愚かである」という各キャラクターの位置付けを、直接的な表現にせず語っているのだ。1分半ほどの短い場面ではあるが、台詞回しが印象に残るシーンである。
――また、かなり飛ばして、後半部で船の沈没が明確になってからは、ご存じの通り救命ボートの数が足りずに混乱が極まってくるのであるが、その乗り入れ場所で半ば暴徒と化した群衆に向けて、乗組員が拳銃で「騒ぐと撃ち殺すぞ!」と威嚇を行う。…そして、再び丁寧な態度で「女性と子供を優先する」という避難指示を徹底するのであるが、背を向けて弾倉を開けると、なんと弾は1発も入っていなかった。視聴者が「この人は銃を向けはしたが、最初から人を殺す気は無かったんだな。いい人だ」と安心した次の瞬間、その弾倉に弾を込め始める。恐らく、「最初は人を撃つ気など全く無かったが、パニックを目の当たりにして今後は必要性が出てくるかもしれないと判断し、隠れて弾を装填した」というところであろう。人の、非情になりきれない優しさと冷酷さを同時に表現した、私のお気に入りシーンの一つである。
…その他にも、このような小ネタは大量に存在し、全て挙げるとそれだけでプレイ日誌級の長さになってしまうのでこれで終わるのだが、全般に言えることが、極限状態における人の行動をそのままに描写しているということである。やれ、こういった「死」をテーマとした映画だと、人の精神構造を過度に美化したり、または逆に極端に貶めたりするような場合が多く、特にそういった描写に政治や民族が絡むと腐臭を放って見れたものではなくなるのだが、この映画のメインシナリオはあくまで恋愛(とアクション)であり、その他の小ネタの部分は自由に見ていくことができる。私に関して言うと、こういったパニックの中で、「英雄的な行動を取る」のも、逆に「他者を押しのけてでも生き残ろうとする」のも、どちらも人間の本質であると思っているため、本作の押し付けない描き方は、実に自然に受け取れるものであった。そういった、解釈の幅があることも、本作が名作と呼ばれる理由だろう。
そんなわけで。話は、この映画を真の名作たらしめているラストシーンへと続く。この、映画「タイタニック」の物語は、沈没事故から84年が経った作中時間の1996年から始まり、そこではタイタニック号と共に沈んだとされる宝石を求めてトレジャーハンターたちが集まって、老婆となったローズがそれに同行して過去の回想を始める…という形でスタートする。ところが、その宝石は実はローズが隠し持っていて、あろうことか映画の最後で海へと放り投げてしまう。ちなみに、未公開となった終わり方としては、わざわざ老婆のローズがトレジャーハンターたちの前で宝石を投げ捨てて、「お金なんかよりも大切な価値がある」と説教をするというエンディングもあったそうだが、未公開にして正解だろう。
…さて、続きである。その沈んでいく宝石と、静かに眠りに就くローズをバックに、映像は海底に沈んだ船の残骸へと移動していく。すると、ローズの宝石に呼応したかのように、船が往時の美しい姿を取り戻していく。そして、タイタニック号の最も豪華な大階段の部屋では、事故で亡くなった人々が当時の姿のままで待っており、そこで若いローズはジャックとの再会を果たす。その様子に、乗組員も貴族も平民も区別なく、皆が笑顔で拍手を送るのであった…。有り得たかもしれない、幸せなラストシーンである。「ローズとジャックの恋愛」というメインシナリオと、「作中で活躍した名脇役が集合」「ついでに壁時計は船が沈んだ午前2時20分」という小ネタ部分の両方が合わさった、まさしく本作に相応しいエンディングだろう。
――そんなわけで。なんか好きなシーンを順番に紹介しただけの取り留めの無い文章となってしまったが、これだけ語らせる作品だと表現することもできる。メインシナリオ良し、枝葉の部分も良し、映像や音声の迫力も良し、難点は唐突に挿入されるエロシーンくらいだろうか。この映画「タイタニック」は、まさに傑作と呼ぶべき作品であり、作り手・受け手に関わらず、娯楽に関わる全ての人に視聴をしてほしい作品である。
(2018年3月28日)
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